借金の債務整理トップページ > 【コラム31】持ち家を手放したら借家の家賃を払うのが大変では?

定期コラム

【コラム31】持ち家を手放したら借家の家賃を払うのが大変では?

引越しのための費用でますます生活が苦しくなりそう・・・

自己破産で免責決定されると、借金の返済がなくなりますが、持ち家は住宅ローンが残っている・残っていないに関わらず、強制的に売却されるか競売にかけられます。そして、債権者である貸金業者等へ平等に分配され、返済に充てられます。ですから、自己破産をする場合、残念ながら持ち家を手放さなければいけなくなります。

「でも、借金の返済ができないから自己破産するのに、すぐに賃貸住宅を借りて引っ越すとなれば、引越しのためのお金もかかるし・・・ますます生活が苦しくなるわ」

持ち家を手放さなければならない自己破産者にとっては、このような不安を持たれるのは当然でしょう。しかし、大切なのは自己破産をしたことで、新しく借りなければならない物件の家賃も含め、毎月の返済額が減ったかどうかのはずです。

仮に毎月の住宅ローンの返済と同じ額の賃貸物件を借りたとしても、借金の返済がなくなったわけですし、住宅ローンの返済額より家賃のほうが安ければ、その分、生活は楽になるはずです。

ただし、持ち家から賃貸への引っ越しに関しては、一時的に引っ越し費用を用意しなくてはありませんので、その点を考えれば不安になる気持ちも理解できます。しかし、ここで1点、少し安心してほしいのは、自己破産をしたらかとすぐに家を追い出されるというわけではないことです。

新しい所有者が現われるまでの数カ月は、従来どおりに住み続けることができるので、その間に新しい家を探すことができます。先日のコラムでは、自己破産後は自由財産という範囲が設けられていますので、ある程度の生活必需品や現金が残ることを説明しましたが、覚えていますでしょうか?

持ち家を手放した後は、新しく住む家の家賃の支払いが発生します。しかし、自己破産をすることで、それまでに支払っていた借金は免責決定によって返済する必要がなくなるわけです。借金と住宅ローンと両方支払わなくて良いのですから、月々の支払い額としてはかなり出費が少なくなるでしょう。新しい家が見つかるまでの数カ月の間に、返さなくてよくなった借金と住宅ローンの返済分をキープしておけば引っ越し費用は賄えるはずです。

とは言え、一概に楽になるはずとは言いにくいのが現実です。それでは、自己破産後に持ち家を手放した場合の生活環境について、当事務所に相談に来られたAさんの例を挙げて、ご説明していきたいと思います。

自己破産後の新居のための入居初期費用を抑える

自己破産で任意売却により、持ち家を売却したAさんは、自由財産としてある程度の財産が残りましたので、生活を立て直すために新しく住む家を探すことになりました。 毎月の家賃が10万円前後の賃料のアパートを探していたところ、引っ越し費用も含めて80万円を超える金額が必要になる計算になり、入居時に初期費用として莫大な金額がかかることに驚いたそうです。

【初期費用の例】
一か月の賃料が10万円の場合の初期費用合計、82万5千円

【内訳】
*敷金2カ月で20万円
*礼金2カ月で20万円
*前家賃1ヶ月で10万円
*日割り家賃半月分で5万円
*仲介手数料1ヶ月で10万円
*保険料1万5千円
*鍵交換費用1万円
*引っ越し諸費用見積もり15万円

【解決策】敷金・礼金などの初期費用のかからない家賃の安い賃貸を探す
各市町村に設けられた公団住宅やUR都市機構なら、民間の不動産会とは異なり、敷金・礼金・仲介手数料などが不要な物件が多く存在します。 入居に必要な初期費用が割安となることで経済的な負担が減りますので、民間の不動産会社だけで選ぶのではなく、公団住宅等を探してみることも選択肢のひとつとして検討されると良いでしょう。

自己破産をした後も自宅を残すことはできるか

新しく住む家のために必要な初期費用を抑えるための賃貸物件の探し方をご説明しましたが、新居に引っ越すとなるとどうしても契約金以外の費用もかかってしまうものです。 引っ越しをすることなく、自己破産した後に持ち家を維持して住み続けることはできないのでしょうか?

1.親族や知人による「買戻し」
自己破産前、もしくは自己破産内で知人や親族に任意売却した後、賃貸として借り受ける。賃料として親族に支払いを行うことができれば、継続して住み続けることが可能となります。

2.リースバック方式で、住宅を残す
リースバックとは、それまで保有していた不動産(持ち家)を第三者(不動産会社など)に任意売却した後に、購入した第三者からご自宅を借り受ける事をいいます。 もっと解りやすく言うと「第三者が、債務者であるみなさんのご自宅を買い取って、それを貸す」という事です。 その際に発生した売買代金は、当然、債権者などの貸金業者等に支払われますし、毎月の貸料も発生しますが、近年の地価総額の下落などの影響により家賃相場が下がっていることや、住宅ローンでは家賃相場よりも金利等を多く支払っている場合があるので、4~6万程安くなる場合もあるようです。

ご自宅の抵当権はなくなり、そのまま売却せずにご自宅で生活する事ができます。 しかし、これは一時的なものであり、生活を立て直すことができず、再度購入することができない場合や毎月の賃料の賃料の支払いが滞るなどの状況になってしまった場合には売却されてしまうこともあります。

どちらの方法にもあるデメリット

*自宅を売却するための買主が見つからない
物件の場所や状況、条件によっては、買主が見つからない場合があります。その場合は、リースバックは当然成立しないことになります。

*一定の収入があることが条件
住宅ローンと同様に毎月買主へ賃料として支払いをしていかなければなりませんので、買主に対して賃料を支払うことができるという信用の意味でも支払い可能な一定の収入があることが条件となるでしょう。

リースバックに関しては、取り扱い実績のない不動産会社もあります。必ずしもリースバックが可能というわけではありません。

ですので、どうしても持ち家を手放さずに債務整理をしたいという場合には、持ち家を手放さなくても借金の額を減らせるような債務整理の方法があるかどうか再度検討し直してみるのもいいでしょう。くれぐれも自分で判断せず、弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをお勧めいたします。