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【コラム23】国民年金を滞納しているとどうなるのか?

国民年金の加入は国民の義務

当事務所に相談に来る方の中には、貸金業者などの借金返済の相談だけでなく、国民年金保険料や国民健康保険料、住民税などの滞納についてどうしたら良いのかといった相談もあります。

今回は、借金の返済が苦しく国民年金保険料を滞納していて払えない場合、果たして年金が貰えるかどうかについてご説明していきたいと思います。

みなさんもご存知の通り、憲法第25条第2項「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」の理念に基づき、納税は国民の義務とされています。しかし、現在国民年金保険料の支払い義務のある人の約4割が、滞納または不払いという状況です。

国民年金保険料は20歳~60歳の人が加入し、保険料の支払い義務がある公的年金制度です。公的年金には、「国民年金」「厚生年金」「共済組合」の3種類があり、国民年金はお話した通りすべての国民が加入しなければなりません。

厚生年金はサラリーマンの多くが入る年金で、保険料の半分を企業が負担してくれます。共済組合は公務員や私立の学校職員などが入る年金です。

国民年金には、「老齢年金」「障害基礎年金」「遺族年金」の3つがあり、一般に定年になったら貰える年金のことを老齢年金と呼んでいます。

老齢年金は25年以上保険料を支払っていると、支払った額に応じて一定額支給されるという仕組みになっています。一方、障害基礎年金や遺族年金は、納付済み期間が加入期間の3分の2以上ある人が受給できる制度で、急な事故などで障害が残ってしまった時や家族が無くなってしまった場合、若いうちでも貰うことが可能な年金です。

年金を滞納すると、老後の生活が苦しくなるだけで済むのか?

多重債務に陥っている方にとって、税金や年金保険料などの支払いも、消費者金融などからの借金と同様、日々の生活の負担になってしまっていることでしょう。保険料を支払うことができずに放置したままでいる方も多いかと思います。しかし、年金を未納のまま滞納しておくと以下のような事態になってしまいます。

  • 65歳から貰える「老齢年金」が受給できなくなる。
  • 病気や怪我で障害が残ったときに受け取れる「障害基礎年金」が受給できなくなる。
  • 年金加入者が死亡した場合に子供のいる妻や子供に支給される「遺族年金」が受給できなくなる。
  • 収入があるのに滞納している加入者には、強制徴収により財産差押えをされる可能性がある。

「えっ! 年金にも差し押さえがあるの?」

そう思われた方も多いのではないでしょうか。実は年金保険料を長期滞納すると、財産を差し押さえられることがあります。もちろん、本当に保険料が支払えないような状況の方は別ですが、2003年より十分な所得がありながら納付督励に応じない場合には、年金の強制徴収が強化されるようになったのです。

今までは、強制徴収は高収入所得者による悪質な未納者にしかないと言われてきました。しかし、最近は社会保険庁の廃止により日本年金機構が発足し、強制徴収業務を国税庁などの外部機関が請け負うことで、滞納者に対して厳しい徴収をしていくようになったのです。

また、本人が支払えない場合は連帯納付義務者となる配偶者や世帯主にも請求が行くようになっています。夫が滞納していれば妻へ、子供が滞納していれば世帯主である親というように、配偶者、世帯主にも支払いの責任が発生します。

もちろん1、2カ月滞納したからといって強制徴収の対象となるわけではありません。未納期間が13カ月以上、本人の前年度の所得が200万円以上ある場合は、強制徴収の対象者として支払う能力があるとみなされます

最終催促から2年以内に差押が

では、どのようにして強制徴収されるのかの流れをご説明しておきます。最終催促状から差押えまでは、2年以内に完結されるような仕組みになっています。

2008年3月末の社会保険庁のデータによると、最終催促状が送付されてから実際に差し押さえになった件数は以下のようになっています。

国民年金強制徴収実績
最終催告状送付件数
(強制徴収対象者数)
督促状 財産差押
2003年 9,653 418 50
2004年 31,497 4,724 744
2005年 172,440 57,470 10,997
2006年 310,551 119,177 13,970
2007年 40,727 8,980 730

【強制徴収までの手順】

強制徴収は、1.最終催告状→2.督促状→3.差押予告→4.財産差押という手順で行われます。

1.最終催告状

保険料の未納が続けば催告状が何度も送られてきます。しかし、それでも納付しない場合、電話や文書、個別訪問などによる納付督励が行われます。さらに、これらに応じなかったり、支払いを拒否したりした場合には、「最終催告状」が送られてきます。最終催告状の対象となるのは、十分な所得や資産があるにもかかわらず保険料を納めない人です。

2.督促状

最終催告状に記載された支払い期限までに納付しなかった人に対して、次のステップとして「督促状」が送られてきます。これにより差押え可能な財産があるかどうかの調査がなされます。

3.差押予告

督促状の支払い期限までに納付がない場合には、次のステップとして差押えを予告する「差押予告」が送られてきます。

4.財産差押

差押予告を受け取ったにもかかわらず保険料を納めなければ、最終手段として財産の差押えが執行されることになります。

強制徴収によって差押えられるものは、預貯金をはじめ銀行に振り込まれる給与や不動産などです。国民年金滞納者に対する財産差し押さえによる強制徴収の数は年々増えていますし、督促状の期限までに支払わなければ、年14.6%の利率で延滞金も加算されます。

ですので、多重債務で苦しんでいるとすれば、まずは債務整理をして毎月の返済額を減らし、その差額で保険料を払ったほうが将来のためです。

ただし、すでに滞納している保険料がある場合、たとえば2年間で30万円近くになっているはずです。そうとなれば、督促状が来たからといって一括で支払うのは難しいのではないでしょうか。

その場合、まずは1カ月ずつでも支払う意思があることを伝えることが大切です。分納が可能な場合もありますので相談してみると良いでしょう。また、収入が少ない場合や病気やケガなどで働けない、倒産やリストラによる失業の場合、保険料免除の制度もありますので、併せて相談してみましょう。

次回のコラムでは、年金保険料の免除や減免についてご説明します。毎月の返済で手いっぱいの方も、所得の額によってはこうした制度を利用することができますので、将来年金が貰えるよう活用してみてはいかがでしょうか。