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定期コラム

【コラム14】年金受給者を狙った融資の手口

年金受給者でも債務整理はできる

前回のコラムでは、一定収入がなくとも任意整理ができるのかについてお話しました。

答えは「一定収入がなくとも任意整理できる場合がある」でした。

通常、一定収入といえばサラリーマンをイメージされる方が多いはずです。しかし、アルバイトやパート、年金受給者であっても一定収入とみなされ、任意整理をはじめとした債務整理をすることができます。

借金をするには、それぞれ事情があるはずです。できれば債務整理などせずとも、借金を完済できることが一番ですが、法定金利の上限があやふやだった時代があり、その時に作った借金の返済がいまだに終わらず、生活はいっこうに楽にならない・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

年金を担保とした融資は法律違反

借金をすることが一概に悪いことだとは断定できません。住宅ローンも借金のひとつですし、急な出費で現金がなく、一時的に融資を利用したお陰で助かったという方も少なくありません。

ただし、やむを得ない事情で借金をする場合、ひとつ気を付けてほしいことがあります。それは、貸金業者からお金を借りる際、年金を担保にしないと貸せないなどと言う悪質な業者からは絶対に借りないということです。

「年金立替」「年金担保金融」などの謳い文句が入ったチラシなどを目にしたことはありませんか? 通常、年金を担保に融資を行うことが認められている団体は、以下の公的金融機関のみです。

  1. 独立法人福祉医療機構
  2. 社会福祉・医療事業団
  3. 年金福祉事業団

この3つに該当しない、つまり一般的な貸金業者などが年金を担保に融資を行うことは、法律で禁止されています。

ですので、年金受給者がお金を借りる際、「年金を担保に」という業者だとしたら違法となりますので、絶対にそのような業者から融資を受けたりしないよう注意してほしいのです。

固定の事務所や電話を持たない悪質業者

では、もう少し具体的に年金を担保とした融資の手口についてご説明します。

年金を担保とした融資の禁止は、以下の貸金業法20条の2「公的給付に係る預金通帳等の保管等の制限」で定められています。

「貸金業を営む者は、貸付けの契約について、その貸付金の弁済を公的給付を原資とする資金から受ける目的で、法令の規定(法律のほか、都道府県や市町村の条例も含む)により譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないこととされている公的給付が振り込まれる銀行口座等の預金通帳やキャッシュカード、あるいは年金証書などの引渡し若しくは提供を求め、又は保管する行為を行ってはならないこと」

このように法律で定められているにも拘らず、お金に困っている高齢者を狙った悪徳業者たちは、年金が振り込まれる預金通帳やキャッシュカードを担保にとり融資を行い、年金受給日にはほぼ全額引き落としてしまうのです。

老後の生活を大切な収入源となる年金ですが、いざ被害に遭ってみて慌てて業者に連絡を取ろうとしても、こうした業者は警察からの摘発を逃れるため、固定の事務所や電話などを持たず、架空の携帯電話だけで営業をしているため連絡が取れないことも多いのです。

注意して見ていただくと分かりますが、こうした融資を謳ったチラシなどには、連絡先として携帯電話の番号しか載っていなかったのではありませんか? しかも、貸金業法の改正に伴い、チラシなどの広告物に携帯電話の番号を記載することが禁じられるようになりましたので、今でも携帯電話しか記載されていないとすれば違法となり、業者には1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられるのです。

公的年金であれ私的年金であれ甘い言葉には要注意!

基本的にサラリーマンが定年退職し年金を貰う場合、仕事での収入が無くなる方が多いでしょう。繰り返しになりますが、年金はこうした収入の代わりとして老後の生活を支える重要な役割があります。

大辞泉で年金を引いてみると以下のように説明してあります。

「終身または一定期間にわたり、毎年定期的に一定の金額を給付する制度のもとで、支給される金銭」

年金には、国民年金や厚生年金、共済年金など国が社会保障の給付として行う「公的年金」と、企業が福利厚生の一環として、従業員の定年後の社会保障の給付として行う「企業年金」があります。

他にも、養老保険など個人で計画して掛ける「私的年金」もありますが、いずれにせよ「年金を担保に融資しますよ」などとの甘い言葉にのらないようにすることが大切です。

また、年金受給者が債務整理を行う際によくある誤解として、年金受給者が自己破産をした場合には、年金が貰えなくなると思っている方もいます。

しかし、そもそも債務整理は借金問題を解決し、生活を立て直すのが目的です。いくら債務整理をして借金が無くなったり減額したとしても、年金が受給できなくなれば、生活そのものが成り立たなくなりますので、自己破産をしても年金が貰えなくなるということはありません。

また、任意整理だけでなく個人再生などでも、年金は「反復継続した収入」「一定の収入」として認められていますので、年金受給者でも債務整理をして借金問題を解決することは可能ですし、まして債務整理をしたらから年金が貰えなくなるということもありません。

保険料は「全額免除」や「半額免除」になる可能性も

余談となりますが、現在、年金を貰っているが借金があり毎月何とか返済をしているという方は別として、これから年金を貰うであろう方が、毎月の借金返済が苦しく年金の保険料も払えていないという場合に注意してほしいことがあります。

年金も保険料の支払いが滞れば督促状が来るようになります。貸金業者からの催促があれば、どうしても年金の保険料より返済のほうを優先しがちでしょう。しかし、年金保険料もそのまま放置しておけば、やがて何十万とまとまって請求書が送られてきます。

この場合、世帯所得にもよりますが「全額免除」や「半額免除」などの手続きをすれば、保険料を払わずに済むか半分に減らすことも可能です。ですので、一番怖いのは、払えないから仕方がないとそのまま放置してしまうことです。

返済に苦しんでいると、ついついこうした手続きをおざなりにしがちですが、老後の生活を考えれば、放っておいてよいわけがありません。現状の借金苦を解決することと併せて、年金の保険料を滞納している方は、このような手続きを取ることも考えてみたほうがいいのではないでしょうか。

また、前回のコラムでもご説明しましたが、例え生活保護を受けている方でも、借金をした理由が「生活のためにやむを得ない」と判断できる内容であれば、任意整理をすることも可能ですので、まずは弁護士や司法書士など法律の専門家にご相談してみてください。